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シモーヌ [映画関連]

2002年 アンドリュー・ニコル監督

「ガタカ」「トゥルーマン・ショー」の脚本を書いたアンドリュー・ニコルの作品。
私はニコルの映画にはいつもストーリィに一番期待する。近未来、虚構と現実の錯綜を得意とするその作風はいつもとても興味深い。

本作のあらすじは、売れない映画監督が主演女優の降板で窮地に陥ったところに優れたヴァーチャル女優のプログラムを手に入れ、それを使って映画を製作。するとそのヴァーチャル女優が大人気になってしまい、創造主である監督の方が逆に身動きが取れなくなってしまう、というもの。実にニコルらしい。

「トゥルーマン・ショー」では創造物・トゥルーマンの大人気を創造主・エド・ハリスは大いに喜びさらなる人気を得ようとしていたが、トゥルーマンの反撃に合いあえなく関係は破綻する。本作では、創造物・シモーヌの人気に創造主・アル・パチーノが嫉妬して、自ら破綻させようとするが、シモーヌはしぶとくてなかなか思うようにはいかない。結果は違えども創造物が創造主の手を離れて造反するというのは一貫したモチーフ。「ガタカ」でも遺伝子による予想通りにならない男が主人公。ニコルという人は、世の中に対して常に「思い通りになんかならないぞ」というメッセージを発し続けているのかもしれない。

創造主が人間だとすると、創造物はお金とか、文化とか、文明なのかもしれない。どれも人間が作り出したものなのに、ものの見事に振り回されている。
「トゥルーマン・ショー」では破綻で終わったが、本作では新しい関係の模索という可能性が示されている。CG女優という存在は、近い将来実現しそうなアイデアだ。る未来がもうすでに未来じゃなくなっている現在、自らの存在を脅かすものを否定するより共存の道を探るべきなのかもしれない。

かもしれない、ばかりだが、別に回答なんかなくてもよいわけで。そういうことを気にしないでも十分楽しめる面白い映画だ。

CG全盛の今の映画界で、CGに負けない存在感のある演技をたっぷり見せ付けてくれる俳優の一人、アル・パチーノが映画監督を演じることで、CGキャラクタと生身の人間の対決が余計面白くなる。また、ワガママな人気女優をウィノナ・ライダーが演じているのも面白い。ウィノナがわがままかどうかは知らないが、その手のワガママなスターのエピソードは現実のハリウッドでもあるという話はよく聞く。魅力的女優なのにプライベートはスキャンダルだらけのウィノナが演じるのはセルフパロディっぽくていい感じだ。(ちなみに私は今でもウィノナの大ファンです)

聴衆はいつもメディアに踊らされる。でもメディアでしか知ることができないんだから仕方ないじゃん。で、作り手がさらにその聴衆の反応に縛られるわけで。世の中メディアが作っているのか?

ところで数年前、「バットマン」で高いところから飛び降りるバットマンをCGで作ったはいいが、着地して歩き出すところまで作ったら、歩き出すのにCGのスタントはいらない、と俳優側から文句がついた、という報道を見たことがある。しかし今は生身の俳優も演技のタイミングをデジタルで調整しているのだとか。うーむ。世の中の変化って早いなぁ。


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