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蛇にピアス [映画関連]

2008年 蜷川幸雄監督

芥川賞を受賞した同名小説の映画化。原作は当時10代だった著者ならではの、若者のリアル感あふれる繊細な作品。映画化にあたって監督を蜷川幸雄にと希望したのは原作者本人だそうだ。

蜷川幸雄はこれまでにも「青の炎」でみずみずしい少年の犯罪を描いた作品を撮っており、演劇は重厚なものが多いのに、映画は結構原作に忠実というか、原作に気を使っているような作風だ。

さて本作。やはり原作そのまま。というよりやはりちょっと及び腰のような。世界のニナガワと言われる監督、若い才能というものに多分弱いのだろう。原作者への憧れのようなものが見て取れる。たぶん自分がどんなに若ぶっても若返ることはできないことを嫌というほど知っているのだろう。

スプリット・タン、入れ墨、ボディピアス、殺人、SM等刺激的なディテイルが扱われるが、それがただの賑やかしではなくて、そういうものがないと暮らしていけない人々の話にちゃんとなっている。かなり痛そうなので苦手な人は受け付けないであろうが。

主演3人が好演。
ARATA、もはやなんだかずるいという感じ。この人は何をやらせてもハマるのだし、近年は静かなるテロリスト的な役柄をこなしてきている人だし。もはや安全パイ中の安全パイだろう。

吉高由里子。「紀子の食卓」のときからとびきり可愛らしかったが、本作でもすごく可愛い。大胆なヌードや濡れ場、舌ピアスまでこなす。それは演技とは違うという人もいるけれど、実際吉高由里子がここまでやってくれたことは映画にとって大きな幸運である。たしかに脱げばいいってもんじゃないけれど力のある若くて美しい女優がここまでしたからこそ撮れた映像というのもすごく重要。

そして一番驚いたのは高良健吾。演じたアマという青年はスプリット・タンで、切れると人を死ぬまで殴りつけたり体じゅうに入れ墨やピアスをしているのだが、可愛い男なのだ。すごく可愛い。子犬のよう。すごくうまいとかそういうわけじゃないんだけど、この可愛さはちょっと驚き。

映画としては、刺激的なシーンの連続ゆえか描写が及び腰で、盛り上がりに欠けるのと、登場人物たちのギリギリの心理状態が今一つ伝わってこない。やはり大人の作品、無難に落ち着いちゃった感は否めない。しかし切ない原作のとおり映画もストーリィは切なく、余韻を残すエンディングでは主人公の幸せを願わずにいられなかった。

ところで豪華すぎる特別出演はやややりすぎ。
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