ゾンビ[米国公開版]

ホラーもスプラッタも苦手なのにゾンビは好き。
最近ゾンビ映画づいているのだが、やはり金字塔・ロメロのゾンビは別格である。

本家のゾンビはみんな顔が青白い。この頃の特殊メイクでゾンビっぽさを出すための工夫なのだが、今見ても結構不気味だ。センスがいいのであまり古臭さも感じない。そして、動きは遅い。なのでゾンビの間を走ってすり抜けたりする。リメイク版の｢ドーン・オブ・ザ・デッド｣ではありえない行動だ。

しかし、動きが遅くても本家のゾンビが一番怖い。ゾンビの描写が丁寧で芸が細かいのだ。本家ではゾンビの食事風景、目の焦点が合ってなくて無表情な顔、意味のない行動などがきちんと描かれていて、単なる脅威という記号ではなくきちんとキャラクタとして映画の中に存在しているのがわかる。ゾンビファンを沢山生んだのもそのせいだろう。そして、その後のほとんどのゾンビ映画が、ゾンビが襲ってくるから怖いのに対し、この映画のゾンビは、それが文明崩壊・世界の終わりの象徴だからこその恐ろしさである。ゆえに、あまりに即物的な強盗団はこのゾンビたちを恐れない。

演出がとても上手く、追い詰められた生存者の焦燥感、閉塞感、世界の終末感もその後のリメイクの比ではないほど強烈。ラストは薄ら寒い絶望感とともに感動もあるし。ホラーとかそういうジャンルを超えて、映画としてとてもいいと私は思う。