SSブログ

ホテル・ルワンダ [映画関連]

2004年 テリー・ジョージ監督

3ヶ月の間に100万人もの犠牲者を出した1994年ルワンダの大虐殺。そのさなかで1200人以上の命を救ったホテルマンの姿を描く。実話である。

劇中で外国人ジャーナリストが言う。
「(虐殺の様子をTVで見て)みんな『怖いね』と言ってまだディナーを続けるのさ」
そう、それが私だ。
ルワンダ大虐殺のことは報道で知っていた。けれどこの映画を観るまで、思い出しもしなかった。
でも映画であまりに厳しすぎる状況にある難民たちに救いの手を差し伸べない国連軍や西欧諸国の姿を観れば、「助けに行ってやれよ」とも強く思う。軍隊を持たない私は直接ルワンダに救助に向かうことはできない。でも「怖いね」と言ってディナーを続けるのも、もうイヤだなと思った。
私に何ができるのか、どうすればいいのか。
多分そうやって考え続けることが必要なんじゃないかと思う。

私はフィクションの中の暴力にはあまり嫌悪を感じない人間である。でも現実の暴力は大嫌いである。世界中にいろんな価値観があるから物事の善悪を言うのは難しいが、暴力だけは悪であるとはっきり言える、と常々思ってきた。物理的な暴力も、精神的な暴力も。本作を見て、暴力って本当にイヤだとほとほと感じた。そろそろ人類は人類同士で戦うのをやめて人類VS暴力の戦いをするべきだ。

フツ族の民兵から逃れてRPF(ツチ族メインのルワンダ愛国戦線)の兵隊に出会う場面で、本来はほっとするはずなのだろうが、わたしはこのシーンを見ながら、「結局武器を持ってるやつが強くて持たない人間が弱いのか」と考えていた。それもイヤだな。「es」でも思ったが、人間は強い力を持った側の方がおかしくなる。「スパイダーマン」の台詞のとおり、力を持つものには責任が伴うべきじゃないのか。
そう、虐殺を止める武力を持っていたかもしれない諸外国、彼らにもやはり責任があったのではないか。

国連軍の兵士が脱出の準備をするのに2日かかると言う。主人公のポールが
「2日ももたない」
と絶望するシーンが印象的だ。
力を持つ者がほんのちょっと躊躇したり手間取ったりしている間に、脅威にさらされている側の者はいかに悲痛な叫び声を上げていることか。

よく出来た映画である。実際の物語は胸をかきむしられるほど切ないし主人公 ポール・ルセサバキナさんは素晴らしい。それをうまく映画化したと思う。とにかく生き残れるかどうかの緊張感が並じゃない。観ていてハラハラが恐怖に変わるほど。史実について説明的なところもなく、あくまでドラマの中で自然に状況が語られる。自然だからリアルで、余計怖いのである。
ドン・チードルがすごい。ポールは武器を持たず、コミュニケーション力と機転でとんでもない状況を乗り切り続ける優秀なホテルマン。常にギリギリの状況であるが、それでもこの活躍は感動的。それも仕事の能力として納得できるタイプの優秀さ。ドン・チードルだからこそ、荒唐無稽なヒーローにならずリアリティのあるキャラクタになったのだと思う。

久しぶりにガツンと見ごたえのある作品。この映画を観られて良かった、と観終わって思った。
できるだけ多くの人に観て欲しい。


nice!(1)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 1

コメント 4

ken

>人類VS暴力の戦いをするべきだ。

この言葉はハッとしました。
出来るなら戦った方がいい。
でも本当にそんな戦いが出来るのかもと思います。
人間は暴力の持つ「力」を抗うことが出来ない生き物じゃないかと思うのです。
いつかそんなお話が出来るといいですね。
by ken (2007-12-01 05:34) 

satoco

暴力は人間の本質の一部ですから、暴力と縁を切ることは不可能でしょう。
でも集団である人類として、暴力をどう御していくか、というようなところへ向かえたらいいなと思うのですよ...。
ほんとうに、いつかそんなお話をしてみたいです。
nice! ありがとうございます。
by satoco (2007-12-01 21:33) 

みほ

>人類VS暴力の戦いをするべきだ。

同感!
同じ生物でも 人間は「人間」として生きるべき。。。
そして暴力がなくてもみんなで共存できる 本当の強さを 人間は持つべき。。。

satoちゃん久しぶり!

ふだんの 生活では ちっちゃいことで
グダグダ言ってる 私ですが
大きいこと考えさせられちゃった・・・ありがとうございます。
by みほ (2007-12-03 21:51) 

satoco

みほちゃんコメントありがとう~

「ホテル・ルワンダ」は観て面白く、考えさせられるいい映画でしたので、「何か映画のDVDでも観ようかな~何がいいかな~」なんて時にはおススメです。そんな暇ないかな。

野獣のような民兵達とは対照的に、主人公ポールがコミュニケーションという文化的な方法で戦い抜くところに希望を感じます。
by satoco (2007-12-06 21:09) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。