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ファーゴ [映画関連]

1996年 コーエン兄弟 監督

うーん面白いなあ。参るなあ。
登場人物たちをかなり冷めた目で描いていてどこにも感情移入するところがなく、起伏あるストーリィも淡々と描かれる。善人のヒロイン、妊婦の保安官に対しても感受移入できないのだから相当な冷め方だ。それでも興味を持って見続けられるのは、抜群の絵作りと演出のたまもの。「ノーカントリー」で映像の完璧さに舌を巻いたが、本作の頃からうまさは突出していた。

「ノーカントリー」と対をなす作品である。本作の冒頭では、現実に起こった事件を元にしているというテロップが出るが、どちらの作品にも、コーエン氏が現実世界の殺伐とした事件から受けた印象を映像化していることは確か。人間は愚かしく、欲深く、物事は思った通りにならずに悲劇的な展開を見せ、そして常識では計り知れない、残酷で狂気に満ちた人物が必ず存在する。
そんな世の中に対するメッセージが、保安官のセリフを通して語られる。

「ノーカントリー」では世界は狂っていて、保安官はそれを諦観を持って眺めているしかなかったが、96年の「ファーゴ」では保安官は犯人を捕らえ、ささやかな幸せの素晴らしさを説き、愛する家族との幸せな場面も描かれる。当時はまだコーエン氏もあきらめていなかったということか。それが21世紀に「ノーカントリー」を撮るころにはずいぶんと荒んでしまい、描かれる世界もずいぶん不条理になってしまった。「ファーゴ」には狂人がいるだけで世界はまだ狂っていなかったと思う。
しかしその予兆はしっかりと描かれている。殺人事件も怖いが、ヒロインが旧友と久々に食事をするエピソードが私はもっと怖かった。病みつつある普通の人々のあまりに淡々とした描き方が怖い。

それにしても本当に、この内容の映画がこんなに面白く見られてしまうなんて、我ながらやや悪趣味なのかも知れない。「ノーカントリー」よりは一般的にわかりやすいストーリィです。
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Sho

この映画はポスターがものすごく印象的で、ポスターを目にしたときからずっと観たいなあ・・と思っていました。
なんだかポスターからは、内容が全然想像できませんでした。
コーエン兄弟って有名な方たちなんですね。
その「ノーカントリー」と合わせてみてみたいと思います。
by Sho (2011-04-23 22:10) 

satoco

>Shoさん
いいポスターでしたよね。私もよく覚えています。
コーエン兄弟は見れば見るほど感服してしまいます...が、決してお勧めはできないですよ。こんな話見てどうしろというのか、って内容です。「ノーカントリー」のkenさんのレビューの方がだいぶまっとうだと思います。
by satoco (2011-04-25 01:37) 

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