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空気人形 [映画関連]

2009年 是枝裕和 監督

業田良家の傑作コミックが原作。業田ファンの私はもちろん愛読。
透明感とエロティシズムがあり、ロマンチックで切なく哀しい物語だ。

さて本作。原作以上に詩的で美しく、素晴らしい。
とくに主演のぺ・ドゥナの素晴らしさに冒頭からあまりにも驚いてしまって、映画中盤くらいまでは目を疑いっぱなしだった。

空気人形というのは要するにいわゆるダッチワイフのことである。それがある日心を持ち、自分で歩きだす。外の世界でいろいろなものに出会い、恋をする。というストーリィ。

冒頭、人形が心を持つシーンで釘づけになる。ぺ・ドゥナのイノセントな美しさ。見事なメイクと撮影で仕上げられた、人工的な肌の質感。人形と人間の間である不思議な主人公がはかなく美しく誕生する。
独特のぎこちなさや微妙な表情も絶妙。本作が美しい映画になりえているのはぺ・ドゥナのおかげである。

映画終盤は原作にはないストーリィ。これがびっくりするほどビターな展開だ。そして恋について、生と死について、より深く語られる。原作は短編であるからそのままで映画にするのは難しいが、そこで付け加えられたのが現実味と深みであるというのは、すごく正しい。

都市に暮らす登場人物たちは、空気人形を含めて、みな孤独で切なく、愛すべき存在だ。是枝監督は彼らすべてを、厳しく優しい目で見ている。それがしみじみと伝わってくる作品。
この手の作品の良さを味わえるのは大人の特権というものであろう。
そして何度も同じことを書いている気がするけど、ARATAは何をやってもいいなあ。単に好きなだけか。


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コメント 3

Sho

素晴らしかったですね。
まさにぺ・ドゥナなくしては成り立たなかった作品ですね。
そうそう、彼女は「イノセント」なんですね。レビューを読ませていただいて
気づきました。それが、終盤のエピソードに繋がってしまうのでしょうけれど・・ あと、登場人物に注がれる監督の視線の暖かさ。こちらも拝読して納得しました。見ていて、彼ら彼女らに対して「ちっとも意地悪な何か」を
感じなかったのはそのせいか、と思いました。
「ダッチワイフ」というといきなりいやらしくなりますが、「空気人形」というと
とても美しく感じますね(笑)
by Sho (2011-04-30 14:32) 

ken

「イノセント」という言葉は僕のボキャブラリーの中にありませんでした。
確かにご指摘の通りですね。
ここでのペ・ドゥナを表現するのに、これ以上の言葉はありません。
ちなみに、最近僕もARATAの良さが分かってきました。
彼はどんな役でも吸い込む、スポンジのような人ですね。
by ken (2011-05-02 12:22) 

satoco

>Shoさん
「誰も知らない」のときは是枝監督の優しさが甘く感じてちょっと嫌だったんですけど、本作ではそこがいい具合にしあがっていますね。そもそもの設定が可愛らしい話ですもんね。
nice! ありがとうございます。

>kenさん
そうなんですよ、ARATAってスポンジなんですよね。カメレオンではなく。私は彼の顔と声が最高に好きです。ちっともイケメンとは思いませんけれど、役者としてはすごく有利な顔と声の持ち主だと思います。
nice! ありがとうございます。

>nice! をくださった方々
どうもありがとうございます。励みになります。

by satoco (2011-05-29 00:14) 

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